Small Form Factor な PC を組んだ
モチベーション
小さくて高性能なデスクトップ PC が欲しいとずっと前から思っていた。これまで使っていたのは Fractal Design の Define R6 というケースで、ゲーマーやクリエイター向けの PC として一般的なチョイスではあるものの、とにかくデカくて重い。サイズ的に机の上ではなく下に置かざるを得ず (「デスクトップ」なのに!)、周辺機器の接続をするときは頭をぶつけないようにしながら机の下に潜らなければいけないし、内部をメンテしたかったら部屋に十分な作業スペースを確保した上で、巨大な塊を引っ張り出して倒して…とやる必要がある。こういった取り回しの悪さが正直億劫だった。
そして、これだけ大きいにもかかわらずケースの中身はスカスカだ。ATX のマザーボードだから PCIe のスロットがいくつもあるが、結局グラフィックスカードの分しか使っていない。SATA のドライブをたくさん載せられるスペースがあったところで、今時使うこともまずないだろう。一度も役に立った試しのない「将来の拡張性」は無駄でしかなかった。
そういうわけで小さい PC の自作に憧れがありつつ、いろんな理由で手を出さずにいたところ、YouTube で FormD T1 というケースを見つけて、ミニマルなデザインと金属筐体の高級感に心を奪われてしまった。
そこで一気にモチベーションに火が着き、構成の検討を始めた。時期的には 13 世代 Core、Ryzen 7000、RTX 40 シリーズが出てからだいぶ時間が経っていて、次世代まで待つべきかとも思ったものの、油断すると生産終了とかで買えなくなってしまいそうだからという理由でケースやクーラーを買い、あらかじめ買っておいても陳腐化しないからと電源やファンを買い、今が安い時期だからと SSD を買い…とやっているうちにやっぱり一式揃えたくなってしまい、それらを組み上げて今に至る。
ついでに、このように Mini-ITX のマザーボードを採用し、小ささを特に重視した構成のことを、Small Form Factor の意で SFF と呼ぶことも知った。「小さい PC」って呼ぶよりなんとなくカッコイイので、今後は積極的に使っていきたい。
構成
全体の構成は以下のとおり。前述の Optimum Tech の動画をベースに、CPU を Zen 4 世代にしてマザボとクーラーを合わせて変更した感じ。
ケース | FormD T1 V2 Sandwich Kit | ¥44,873 |
マザーボード | ASUS ROG STRIX B650E-I GAMING WiFi | ¥32,303 |
CPU | AMD Ryzen 7 7800X3D | ¥60,801 |
グラフィックスカード | NVIDIA GeForce RTX 4080 Founders Edition | ¥198,980 |
メモリ | Corsair VENGEANCE 64GB (2x32GB) DDR5 DRAM 5600MT/s C40 AMD EXPO Memory Kit (CMK64GX5M2B5600Z40) | ¥26,336 |
SSD | Western Digital WD_BLACK SN850X 2TB | ¥22,051 |
電源 | Corsair SF750 | ¥24,302 |
電源ケーブル | MODDIY ATX 3.0 PCIe 5.0 600W Triple 8 Pin to 12VHPWR 16 Pin Power Cable | ¥4,792 |
CPU クーラー | Thermalright AXP90-X47 FULL | ¥4,806 |
CPU ファン | Noctua NF-A9x14 HS-PWM chromax.black.swap | ¥3,278 |
ケースファン | Phanteks PH-F120T30 (x2) | ¥11,541 |
(合計) | ¥434,063 |
注意すべきポイントを挙げると:
- NVIDIA の Founders Edition は日本では公式に販売されていないため、何らかの普通でない買い方をする必要がある。自分の場合はフリマサイトに未使用品をボッタクリではない値段で出してくれている人がいたのでそれを買った
- FE グラボに付属している 12VHPWR の特大アダプタを使うとケース底部のパネルが閉じなくなるため、他の手段での接続が必須。自分は動画で紹介されているとおり、電源から直接接続できる 8-pin x3 → 12VHPWR のカスタムケーブルを使った
- CPU ファンを別に用意しているのは、クーラー付属のものより 1 mm 薄くなるというのもあるが、主に見た目のため。付属のファンはドギツいオレンジ色で、あまりに周りと調和しないので
実際に組み立てるのはそれなりに苦労したけど、ここでは主題でないので詳しく書かない。だいたいこの動画のとおりにやればうまくいくのではないかと思う。
よかったこと
実用的な面においては、やっぱり机の上に無理なくおけるサイズになったのが便利。実際、この PC が組み上がってからも前の PC との比較のためにマウスとキーボードを繋ぎ変えたり、モニターやキャプボとの接続であれこれ試行錯誤をしたりしたので、背面の端子類にすぐアクセスできるのはとても助かっている。
ただ、それよりもメリットとして大きいのは「愛着が湧く」っていうことかもしれない。これは単に苦労して組んだからっていうことではない。自分の場合の話だけど、昔からでっかくてメカメカしたものにあんまり興味がなく、携帯ゲーム機とか、ヘッドホンとか、腕時計とか、そういう自分の手に収まるサイズのものが好きだった。PC についても例外ではなく、小さいもののほうが大事にしてあげようって気持ちになれる気がする。動けばいいではなくより良い状態で動くようにしようと思うし、見た目にもこだわりたくなる。自分の手で抱えられない大きさのものってパーソナルじゃない「機材」とか「設備」って感じがして、どうしてもドライに接してしまうんだよね。
そういうわけで、今回のマシンは見た目にも満足のいくものになった。
お気に入りポイントその 1、Titanium カラーの FormD T1 と 4080 FE のマッチング。色といいサイズといい、あらかじめ想定されていたかのように調和しているし、サイドパネルのメッシュを通して見えるライティングが超かっこいい。
お気に入りポイントその 2、CPU ファンの向こうに見える銅製ヒートシンク。全体的にブラックやグレーで統一されたコンポーネントの中でいいアクセントになっているし、この奥に高性能な CPU が潜んでいることを思わせる感じでよき。
気になること
ネット上で FormD T1 + 4080/4090 FE のビルド例を探すと、グラボがケースに対して水平になっておらず、ケース前面側が微妙に下がってしまっている状態の写真をちょくちょく見ることがある。グラボがかなり重いにもかかわらず、それを支えるのが PCIe の接続部分と背面の IO ブラケットのネジ留めだけで、前面側に支えが何もないためこうなってしまうことがあるようだ。組み立てて間もない今は気になるほどの傾きはないが、数か月や数年経つと顕著に傾き始めて、せっかくの美観が損なわれてしまうのではないかと心配になる。
もう一つは、今現在 CPU 側のサイドパネルが若干浮いてしまっていること。電源ユニットがケース幅をはみ出して邪魔をしているように見える。一応原因には心当たりがある1ので直したいが、見てのとおり内部がギチギチであるゆえに取り付け直すには先にいろんなものを外さねばならず、ちょっと面倒で放置してしまっている。
余談
この記事の主題は「SFF PC はいいぞ」なわけだけど、他人にとって有益な情報というよりは、気に入ったケースを見つけて半ば衝動的にマシンを組んで、結果に満足しているというだけの記事になってしまった。実際のところ、皆にこれを薦められるというわけではない。単に小さいだけなら既製品のミニ PC がいろいろあるし、高性能を求めるとしてもお金を掛けていいならハイエンドのゲーミングラップトップという選択肢もある。
個人的には強めの CPU の載ったラップトップ + eGPU ボックスという構成には興味があって、主にコンテンツ閲覧用途で使っているラップトップとゲーム用デスクトップを一つにまとめられる可能性を秘めていると思う。もちろん今回の成果を早々に捨てるつもりはないが、自分にとってベストなスタイルの探求として、これからもいろいろ試していきたい。
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電源をグラボからオフセットするためにケース付属の 5 mm スペーサーを使っているが、ネジの切られ方が微妙なのか十分にネジが締まりきらず、1 mm くらい余分に間が空いているのが原因ではないかと思っている。 ↩